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連載ー蓼科高原のクレオパトラ ブログトップ
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蓼科高原の春 [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

桜が満開だと万葉堂さんの女将さんから情報を得て、主人は何時ものようにバタバタと奥さんと私を車に積み込んで蓼科の山荘にやってきました。蓼科高原の今年の春は早いようです。主人は、聖光寺のたわわな桜や雪柳の色とりどりに改めて感服の様子。鹿の一家や小鳥のさえずりにも満足で高原の春は時間の流れが東京と違い緩やかで別天地だなと言います。それに、今年は、近くのフランス人やオーストアリア人経営のレストランも盛況のようだし、台湾から中国人が中華料理店を開いて、物珍し屋の主人はすぐに出かけました。天然ガスを追い求めて東南アジアに数多く出かけていた主人は、本場の中国料理の油の使い方に昔から尊敬を払っています。その本場の油の上手な使用に久しぶりに出会って大満足の態です。それに、主人はしつこく取材して、近くベルギー料理店が開くと聞きこんできました。”何、本場のムール貝料理が食えるのか”と又喜んでいます。お気に入りの北欧料理屋さんも大入り満員で”オリンピックも近い。蓼科も国際的になったな。”とニコニコしています。
パテイー

蓼科湖のホットドッグ [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

毎年、夏の気温が上がるなー、と主人は目白で述懐していましたが、例によって、おい、行くぞと奥さんと私に突然声をかけて、あっという間に、中央道をひた走り、蓼科高原の山荘に来てしまいました。山荘の庭は、完ぺき主義の庭師さんの手がよく入り、各種木々が勢いよく緑で一杯です。やはり三次元の日本は違うな、裾濃効果で少し高地に来ると気温が急速に落ちるね、と目白とは10度も違う気温に満足げの主人です。蓼科湖を少し下がったところに、しゃれたホットドッグ屋さんが店開きしていて、そこにとても気の付く若い男の店員が居ました。主人は彼のサーヴィスに驚嘆の風、おい、パテーよ、この子の対応なら、世界で通じるぞ、ユーモアがあるし、杓子定規ではない、昨今の若い者にもいいのがいるなーと痛く感心しています。周辺は蕎麦銀座で各種蕎麦店が妍を競うのですが、主人は、もう続けてホットドッグに通っています。私も嫌いではなく主人の膝でお相伴に与っています。
パテイー

小鳥の集団 [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

短い夏だったな、と主人が語り掛けます。もう山荘のヴェランダには、寒くなる季節に備えて小鳥の群れがヒマワリの種をついばみにひっきりなしに飛んできます。主人は、餌箱を、手の届くところにおいて、少しも人を恐れない小鳥の観察に忙しいです。山雀、コガラ、ウソ、四十ガラ、五十ガラ、山鳩、それにお気に入りのミソサザエ。大変な数で、今年は秋が早い、様子が違うね、と主人は話しかけます。小鳥たちは私も少しも恐れず、犬を怖がらないとは少し沽券にかかわりますよ。リスまで平気で小鳥の仲間入り。小鳥は書斎の中までチョコチョコと歩き回ります。こりゃまるでシドニーだな、と主人は回想します。豪州に駐在時代、シドニーの家には何時も色とりどりの鳥たちがヴェランダを占領していたよ。と言います。主人は、東京の目白の家で雀に餌をやり続けています。でも雀は少しも馴れてくれません。パリのルクセンブルグ公園の雀。主人には雀が人の肩に安心して飛び乗る光景が忘れられません。そろそろ、寒くなったね、パテイー。目白に帰るかな、と主人は言います。目白の雀にも餌をやらねばと思いついたようです。
パテイー

山荘の夏 [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

山荘の庭に鹿の親子がのんびりと若芽を食べています。鹿は主人の植えたブルーベリーの樹皮をはぎ取って食べてしまいました。でも主人は鷹揚にかわいい鹿の子供の事だ、許す、と言います。ヴェランダは小鳥の集会場所です。主人の好きな鳥は小さく黒い羽根の冴えない姿をしたミソサザエです。こいつは俺に似ている。おっちょこちょいで、やじうまの様に何でも興味を持つ。と、主人は目を細めます。書斎に平気で飛び込んで、主人の椅子にちょこんと乗って室内を見回してチッ、チツとせわしなく鳴きます。他の鳥とはまるで違いさっぱり私もヒトも恐れません。今日は、山荘の下のお気に入りのお菓子屋さんに出かけました。主人には大変思い出のあるオーストリーのウイーン。そこのお菓子を作って売っています。特にチョコレイトはすべてスイスが発売元の本物を使っています。お気に入りの菓子職人が、今朝、庭先に熊の親子を見ました、と言いました。主人は驚愕の体で、何、熊が出たのか、初めてだね、にぎやかになったな、しかし、今後少々用心がいるな、と私をじっと見ていました。
パテイー

蓼科高原の夏 [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

蓼科高原も遅ればせながら梅雨明けの様子。一挙に太陽の光が透明な空気を切り裂いて、主人は、アーこれは、スペインの光と影だ、とマドリッドの高地に舞い降りる飛行機からの景色を思い出しています。主人に言わせると、日本は既に、南洋の気象に変化して、これから人の住居も大いに変わることになります。今年は、近くに、オーストラリアの人々が移住してきている様子で、主人は喜んでいます。連中が金を落としてくれる、ありがたいことだねー、それにしても、茅野市の役所も観光客誘致をいろいろやっているのだろうが、勢いが弱い、ナイヤガラの滝も、スイスのアルプスも、観光客誘致がダイナミックで、国際的な手法を使いまくる、それに比べて、どうも、田舎の役人仕事は視野が狭すぎると、残念がります。日本アルプスに囲まれた蓼科高原、観光資源は無限なのになー、観光業界も国際企業に開放して、大いに変身すべきなのにと、独り言ちています。とまれ、素晴らしい蓼科高原の夏が来ました。今年は、私たち犬族や、ペット同伴を歓迎するレストランが増えて、主人は、パテイー喜べ、これで少しは先進国の匂いがし始めたなと、喜んでいます。
パテイー

天国の蓼科高原 [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

ご近所の三宅教授の奥様から贈られたバッハのピアノ曲、インヴェンション。グールドが弾いています。蓄音機はもうずいぶんと古い。主人は、奥さんの苦情にもかかわらずこの旧式な機械を捨てません。蓼科高原の今日は、主人ならずも天国のようです。緑の木々は元気に息をしていますし、吹き抜ける風は、まるで湿気がなくて香しい。思えば、当時の東京ガスの村上社長はえらかったなーと主人は何時も言います。社員に保養所を作ろうと関東一円から外周まで、気象状況を徹底して調べたのです。日照率、乾燥度、気温、等々を精査して、軽井沢でも、那須でも、草津でも無く、ここ蓼科高原に白羽の矢を立てたのでした。もう40年近い昔です。主人は東京ガスとの仕事を通じて、蓼科の良さを知ったのでした。梅雨の最中の今日、不思議に空は晴れ渡り、日の光は優しく一帯を覆っています。主人はヴェランダに上半身裸で日光浴。書斎から流れるバッハはいいよなー、と話しかけます。東京目白の空気とはまるで別世界。私も随分食が進みます。主人はお前は中年太りだと嫌な事を言います。
パテイー

驚異の変化 [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

蓼科高原の山荘、主人はずいぶん長くNECのヴァリュースターというパソコンを使ってきました。それが、OSとやらがもう使用できない古さになって、茅野のヤマダで、買い換えました。本日、同じ製品ですが一番新しいパソコンが、技術者も一緒に山荘に届きました。主人は、2時間も、ノートを片手に、技術者さんの話を聞いていましたが、とうとう頭が混乱して、唸り声をあげました。OSは、8.1とやらで、画面も使い勝手もまるで違うらしく、技術者さんが、まずはいじって慣れて下さいと匙を投げて帰ってから、ノートと首っ引きで、いじっています。メイルが打てないと、深刻な顔で機嫌が大変悪く、今は主人のそばに寄り付かないで遠くから見ています。”フーン、技術とは暴君なり”と主人が独り言ちました。君主危うきに近づかず、です。
パテイー

早春の蓼科 [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

春の霞、茅野は今桜が満開。少し上って蓼科湖周辺は、三分咲きの状態です。山荘はまだ緑がなく、春の陽が直接庭に降り注いでいます。鹿も小鳥も下の緑の土地に下がっていて姿が見えません。其れでも鶯が鳴いています。
主人は、”いつも驚くが空気の美味さは、大変なものだ。下界でタバコを吸い、酒を飲んで、健康によろしくないが、此処に来ると、一挙に空気に浄化されて、まっさらの身体になるようだ。パテーも若返るぞ”と、随分簡単に考えているようです。蓼科山は女神の山。何時もの様に優雅で綺麗です。奥さんと蕎麦を食べてきた主人、”やはり本場は違う。”としきりに感心しています。
パテイー

野球とベイスボール [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

主人はこの所、テレヴィに釘づけです。NHKのアメリカ大リーグの野球観戦です。私は膝に乗ってついつい誘われて見入っています。主人は、なるほど日本とは大分違うなと感心ばかりしています。初回に出塁するとすぐバントする日本は、"小さいなー"と嘆いています。それにただ球威を頼りにバットをボールにぶつけるだけの日本の打者も、"小さいなー"と又嘆きます。主人は勇ましいのが好きで、ホレ、アメリカの野球はピッチャーとバッターが何時も巌流島の決闘の様だ、一球、一球全力投球、全力でバットを振る、”小さくない、大きいよ、鐘、太鼓をたたいて見過ごすのはもったいない”と、言っています。パテイーよこれが野球と違うベイスボールらしいね、と何度も言います。息子さんが駐在先のヒューストンから出張して来て、あちらの球場は客が入らないと一挙に1セントに入場料を下げて人を呼びこむ、と話すと、仰天して、へー、流石知恵を出すアメリカだな、柔軟なものだと感じいっています。
パテイー

目白の雀 [連載ー蓼科高原のクレオパトラ]

ヴェランダに飛んでくる雀を何とか手なずけたいと、主人は根気よく粟の実をプラステイックの皿に、置き続けています。ヴェランダに出るガラスのドアのすぐそばに皿を置いて、観察しています。もうだいぶ時間が経ったのですが雀はさっぱり慣れた様子がありません。主人が少しでもドアに近づくとパッと飛び散ります。私は犬ですから、雀もヒトと違って仲間意識があるのでしょうか、近寄っても逃げません。主人は之が悔しくていけません。最近はおかしな事を言ってます。”パテイーよ、雀は太らない。粟の実を盛んに食べる様だが、決して食べ過ぎない。一定量腹に入れると飛んでいく。太って飛べない雀は居ないよ。それに比べて最近のお前は食べ過ぎだ。重くなった。動作も鈍い。雀に見習え。”と言います。主人はもう諦めればいいのに、パリのルクセンブルグ公園の雀と目白の雀は同じ筈だと、毎日、目白の雀が手のひらから餌をついばむ日を夢見ているようです。
パテイー
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